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DIYオッケーのMビルで、カスタマイズを楽しみながら暮らす

2017年7月に紹介した新潟市中央区礎町通5ノ町に立つ「Mビル」。(記事はこちら→「柳都大橋のたもとに佇む小さなビルが、DIYオッケーの賃貸住宅に」)

2016年末、全フロアが空き部屋になっていた小さな4階建てのビルですが、現在は2階がカメラマンのスタジオに、税理士事務所が入っていた3階・4階は賃貸住宅になりました。1階以外の3つのフロアが埋まり、小さなビルに再び賑わいが戻っています。

↑礎町通の袋小路に立つMビル。手前には桜の木が並んでいる。

↑1969年竣工のコンパクトな4階建て。ビルの前にあるイチョウの木は夏になると葉が茂り、程よく建物を目隠ししてくれる。

今回取材で訪れたのは、2018年2月に3階に入居をしたKさんご夫婦のお部屋です。

↑光あふれる部屋には賃貸住宅としては珍しいアイランドキッチンが据えられている。

古町にあるhickory03travelers(ヒッコリースリートラベラーズ)で働くグラフィックデザイナーの奥様と、会社員のご主人。以前は上古町界隈にある戸建てを借りて2人で住んでいましたが、昨年結婚をしたタイミングで引っ越しを決断し、Mビルの3階の部屋で暮らし始めました。

日当たりの良さと、DIYできることが入居の決め手

奥様 「以前2人で住んでいた戸建ては、本町の小路を入ったところにある棟割長屋のような賃貸住宅でした。築60年程の建物でしたが、住宅が密集する場所で光が入りにくいのが悩みでした。そろそろ別な場所へ引っ越しをしようかと考えて検索をしていた時に、この『ぶっけんFOCUS』のMビルの記事を見つけたんです」

ご主人 「毎日妻からLINEで物件情報を共有してもらっていましたね。その中でもこのMビルは元々が居住用じゃないというのが面白かったのと、DIYをしてもOKというのが魅力的で内見を申し込んだんです」

しかし、記事で紹介されていた4階の部屋は既に入居者が決まっていたため、代わりに、まだ税理士事務所が出た後の状態だった3階の部屋を見せてもらったのだそうです。

奥様 「その時に住んでいた戸建ては住宅密集地である上に磨りガラスが多くて外の景色が眺められなかったんですが、ここに来たらすごく眺めが良くて驚きました。私たちは古い建物がものすごく好きという訳ではないんですけど、古い建物に対する抵抗もなかったですし、この部屋はリノベですごくいい部屋にしてもらえそうだと思って、すぐに入居を決めました」

3部屋に分けられていた室内は、物件オーナーである明治開発有限会社によるリノベーション工事が入り、明るく開放的な1LDKに生まれ変わりました。

床材はラワン合板で仕上げ、部屋の間仕切りには元の税理士事務所で使われていた棚板とOSBを組み合わせた収納棚を採用。材料費を抑えつつ、住まい手が自由にカスタマイズしていけるラフな空間ができあがりました。

↑リノベ前の室内。

↑工事途中の室内の様子。洗面脱衣室よりリビングを眺める。

ご主人 「今年の2月1日から契約をさせて頂きましたが、最初の2週間ほどは、棚を追加したり照明用のダクトレールを取り付けたりと、DIYで追加の工事をしていきました。丸ノコやインパクトドライバーを買ったり、おじいちゃんが使っていた工具をもらったりして作業をしていましたね」

居心地の良さと使いやすさを追求し、DIYでカスタマイズ

ではここから、DIYが好きなご主人と、グラフィックデザイナーの奥様がカスタマイズしてつくり上げた部屋を見ていきましょう。

まずは玄関です。

↑入居前の玄関と室内の様子。

↑ご夫婦がカスタマイズした玄関。限られた空間を上手に使って自転車を格納している。

↑コンパクトな玄関ながら、可動棚でたっぷりと収納スペースをつくりだした。

天井を見るとKさんご夫婦が選んだペンダントライトがぶら下がっています。さらに、ツーバイフォー材を柱にしてご主人のロードバイクを固定。靴が並ぶ可動棚もご主人がホームセンターで購入した金具を使ってつくり上げたものです。

奥に進んだところにあるキッチン周りは次のようにカスタマイズ。

↑前面にOSBのパネルを設けたアイランドキッチン。(入居前の様子)

↑ご夫婦のお気に入りの道具や植物が彩る、楽しい空間が完成。

アウトドア用の折り畳めるチェアに、ご主人が数年前に作った小さなダイニングテーブル。キッチンの窓の上には棚とダクトレール、ペンダントライトが加えられました。

↑ご主人自作のテーブルは経年変化で天板が濃い色合いに。

↑使わないときはコンパクトに折り畳めるアウトドアチェア。肘付きで座り心地もいい。

↑バルミューダのケトルが似合うおしゃれなキッチン。

キッチンの背面には礎町通を見渡す素敵な景色が広がっており、毎日のコーヒーを入れる時間が特別なものになりそうです。

さらに、コンクリートの柱が突きだしたコーナーのデッドスペースには2本の木の柱が設けられています。ツーバイフォー材の両端に「ディアウォール」という突っ張り材を取り付けて、フライパンなどの調理器具を掛けるコーナーにしています。

↑礎町通の風景を眺めながらコーヒーをドリップ。

↑北欧デザインのかわいらしいカップが並ぶ。

↑ロープや配管などを取り付ける金具を利用した調理器具掛け。

ご主人 「どれも全然違う用途の金具なんですが、ホームセンターで使えそうなものを見つけて取り付けてみました(笑)」

リビングは次のようにカスタマイズ。

↑工事前は間仕切りにより細かく仕切られていた。

↑リノベ工事を終えて、すっきりシンプルな状態になったリビング。

↑リビングのイスもアウトドア仕様。茶色い幅木を白く塗装するなど、細部にもごだわりが感じられる。

蛍光灯のシーリングライトは取り外し、インダストリアル感のあるペンダントライトに付け替え、奥の窓辺にはツーバイフォー材のTVボードを設置。さらに、天井にダクトレールを取り付けて照明を追加しています。

ご主人 「普通のダクトレールだと電気工事士の資格がないと設置できないので、コンセントから電源が取れるタイプのものをネットで見つけて購入しました。線を天井と壁に這わせて、コンセントに繋いでいるんですよ。こたつみたいなスイッチが付いています(笑)」

↑自由に好きな照明が増やせるダクトレールは便利なアイテム。

↑こたつを彷彿させるスイッチがかわいい。

↑S.H.S鳥屋野店内にある「Feelin’ Good General Store」で購入したというインダストリアルな照明。

テレビの左側にあるデッドスペースにも可動棚を取り付け、無駄なく活用。

↑棚に整然と並ぶフェローズのバンカーズボックス。引っ越し時の梱包に使ったものをそのまま活用しているそう。

南東向きの窓からたっぷりと光が注ぐため、窓辺は植物にとって最高の場所。さらに両サイドにも窓があるため、取材に訪れた小春日和のこの日は、気持ちのいい風が吹き抜けていました。

↑心地よい光で満たされたLDK。

↑窓辺に置かれたサボテンがかわいい。

↑架台の上にもグリーンが並ぶ。

キッチンの横にはパキラなどの植物が置かれた架台がありますが、「カウンターチェアを買って、ここで外の景色を眺めながら朝食を取るのもいいねなんて話しています」(ご主人)。

また、冷蔵庫の隣にある大きな給湯器はOSBをL字に組んで目隠しをするという工夫も。

↑入居前のキッチンの様子。右奥コーナーには大きな給湯器が鎮座している。

↑無機質で存在感のある給湯器はきれいに目隠し。

ちなみにカーテンは鳩目が付いたテント生地のものを採用。「建築士の友人が事務所で使っているのを見て、同じものを使ってみました。冬は窓辺の断熱にも役立ちました」(奥様)。

ハンガー掛けはガス管製。ご主人の友人にねじ切りをしてもらって組み立てたのだそう。無骨な雰囲気が空間にマッチしています。

洗面脱衣室はコンパクトですが、ドラム式洗濯乾燥機があるので物干し不要。室内の物干しスペースを考えずに暮らせます。

↑リノベ前の洗面脱衣室。

↑白を基調とした明るい空間に刷新。洗濯機の上には使い勝手のいい棚を追加している。

かつてタイル張りだった古いシャワールームは近未来的なバスタブが置かれた爽やかな空間になりました。

↑マンションの歴史を感じさせるリノベーション前の浴室。

↑明るく清潔感のある空間に生まれ変わった。

6畳程の寝室はクローゼットを兼ねています。日当たりのいいリビングとは真逆の籠り感のある空間で落ち着いて休めそうです。右の間仕切りを兼ねた棚は上部が空いているため、窮屈に感じることもありません。

↑リノベ前の寝室。左の壁には一面の本棚が造り付けられていた。

↑程よい狭さが落ち着ける現在の寝室。北東側の窓から穏やかな光が注ぐ。

賃貸住宅でありながら、自分たち好みの空間をつくって暮らしを楽しむKさんご夫婦。これまでの賃貸住宅は「原状回復義務」というルールの元、借り手が大幅に手を加えることはできませんでした。しかし最近では、住み手が自由にDIYできる賃貸住宅に価値が見い出され始めています。

「色々な不動産検索サイトで、DIYができる物件を探しましたが、その数は本当に少なかったです。このMビルのように、古くても自由に手を加えられる物件のニーズはすごくあると思いますよ」とご夫婦。

貸し手も借り手も神経質にならなくていいというのは、古い物件が持つ懐深さと言えるのかもしれません。

人口が減少し物件が余っていく時代になりました。また、社会が成熟し、モノ消費よりもコト消費に価値が見い出されるようになっています。自分らしい暮らしを実現できるDIY可の賃貸住宅は、まさにこれからの時代に合った新しい住まいの選択肢と言えそうです。

新潟市中心部には築40年超の空室が目立つビルが少なくないそうですが、「DIY可」という新しい考え方がユニークで楽しい暮らしを叶え、街の活性化にも繋がっていきそうです。

写真・文/鈴木亮平